雪がとけたら
第零章【白い世界】
……………
髪を切った。
断っておくが、失恋とかいうベタな理由なんかじゃない。
ただ単に、全てを取り払ってしまいたくなったからだ。
もう一つ断っておく。
別に今日の葬式に合わせたわけでもない。
窓の外に視線を移す。
白銀の世界の中に、黒い喪服が映える。
知っている人もいたが、中には見たこともない人達もいた。
多分、遠い親戚か何かだろう。
…これだけ沢山の人達に見送られて、君は幸せ?
問いかけるが、答えはない。
当たり前だ。
君はもう、話せない。
白銀の世界に黒い行列。
なんだかとても、非現実的な世界。
あの行列はやがて、この狭い部屋に入ってくる。
お辞儀をして、御焼香をして、「まだ若いのに」と涙を浮かべる。
全てが非現実だ。
これは現実なんかじゃない。
みんなこの白銀の世界に騙されてるんだ。
早く目を覚まして。
これは悪い夢。
みんな早く目を覚まして。
…目を、覚まして。