雪がとけたら



…クラブのある日、僕は体育館倉庫に三角コーンを取りに行った。

体育館では、バドミントンクラブが活動している。

僕の視線は、気付いたらあいつを追っていた。

元々運動神経のいいあいつは、誰にも負けていない様だった。

勝った時に見せる笑顔が、どの女子よりも輝いて見えた。



…あいつを見つめている自分に気付き、なんだか無性に恥ずかしくなって、僕は急いでコーンを取り出した。

そんな僕の耳に、バドミントンクラブの男子の声が聞こえてきた。


「なぁ、戸田って絶対胸でかくなってるよな」

「お前も思った!?もうブラジャーとかしてんのかな?」

「見てろよ、ジャンプするとき揺れるからっ」








…気付いたら僕は、コーンを投げ捨ててそいつらに殴りかかっていた。

気付いた先生が止めに入ったが、頭に血が上った僕は拳を止めることができない。



…見るんじゃねぇよ。


悟子のこと、そんな目で見るんじゃねぇよ!








…ようやく冷静さを取り戻したのは、泣きそうな顔で僕を見ているあいつに気付いた後だった。





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