雪がとけたら


寮のある学校を選んだのはなんのことはない、おばあちゃんが親戚と同居することになったからだ。

おばあちゃんはずっと拒否して僕と二人で暮らすと言っていたが、年齢が年齢だけに負担をかけたくなかった。
だから、寮のある高校を選んだ。

おばあちゃんは嫌がったが、休みの度に帰る約束で受験した。

入寮日、気丈なおばあちゃんがしわのたまった目に涙を浮かべて「休みには帰ってきんさいね」と呟いた時は、さすがに鼻の奥がつんとした。




「そういや、本読んだ?」
「あぁ、読んだ読んだ。帰ってから返すわ」
「どうだった?」
「んー…俺にはやっぱ、三島は難しいや」
「ははっ、そっか」

端正な顔を綻ばせる西。

口に出しては言わないが、僕がこの高校に入学できたのは西のおかげだと思っている。



中学の時、僕達の学年で少しだけ『読書ブーム』がきた。
もちろん、西の影響だった。

男の僕から見ても、端正な顔立ちで長い足を組み本を読む西はかっこよくて、もちろん女の子から見たらそれはそれは美しく見えたらしい。
他の男子はただのガキだけど西は違う。そんなイメージが広まり、馬鹿な男子は少しでもあやかろうと西の真似をして本を読み始めた。

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