雪がとけたら


もちろんそれがかっこよく見えたのは外見も雰囲気も大人っぽい西だからであって、他のガキがやっても大して変化があるはずもなく。

それに気付いた男子はすぐに飽きたので『一時的な』ブームだったのだが、僕は意外にも読書にはまってしまったのだ。

僕は西にあやかってモテようと思ったわけでもなんでもないのだが、読み始めると本は面白い。

西の家の書斎に行かせてもらった時は、その雰囲気と匂いに一瞬で虜になってしまった。

僕は西の薦める本を片っ端から読みあさり(それでも西のおすすめは途切れることがなかったから凄い)、お陰で読解力と知識がべらぼうに増えた。

西は「中川は元々読解力はあったよ」と言ったが、西に出会わなければこんなに本を読んではいなかっただろう。

この辺では有数の進学校に合格できたのも、その辺が影響してると僕は思う。








そんなこんなで僕はこの高校に入学したのだが、西がこの高校を選んだ理由は教えてくれなかった。

地元にだって、もっとレベルの高い進学校がある。
でも西は寮に入らなければいけないこの高校を選んだ。

「なんとなく」だと言ったが、僕はどうも腑に落ちなかった。

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