雪がとけたら
三年も付き合えば自然とわかる。
西は、気軽に踏み込めない場所を持っていた。
決して他人を踏み込ませないゾーン。
いつも変わらない笑顔がそれを証明している。
いつだったか僕は西に、「西の本当の顔はどれ?」と尋ねたことがあった。
もちろん冗談っぽく言ったのだが、西は少し笑った後寂しそうに呟いた。
「どれだろうね。多分、幻滅するような顔じゃないかな」
その時は意味がわからなかった。西が人を幻滅させるなんてあり得ない。
もちろん高校生になってからもその意味はいまいちわからなかった。
わかったのは、多分僕も知らない西がいるということだけ。
…本当の意味を知るのは、もう少し後のことだった。
…「あ、クラス別だな」
西は掲示板を見ながら呟いた。
僕もチラッと確認したが、僕が四組、西が三組だった。
「体育は同じかな」
「悪いね、また女子の視線をいただいてしまう」
ははっと笑う西に「調子乗るな」と軽く蹴りを入れ、僕たちは別れる。
僕は別に緊張も臆することもなく、教室のドアを開けた。