雪がとけたら
「何?聞くからおりてよ。」
一久はナァの手を無理矢理肩からはずす。
ぴょんっと背中から降りたナァは、頬を両手で覆いながらキャッキャと話し始めた。
「ナァね!あんな綺麗な人生まれて初めて見たのっ!王子様みたいでねっ、ナァのこと軽々守ってくれそうなのっ!」
僕は一久と視線を合わせ、同時にため息をつく。
頬杖をつきながら一久が口を開いた。
「でたよ…ナァの惚れ癖」
「今回は本気だもんっ!ほんとに運命感じたんだもんっ!ねぇ雪君、雪君なら信じてくれるよねっ!?」
ずいっとナァの小顔が僕に寄せられる。
…まじ?
一久に救いの視線を送るが、奴はニヤッとするだけで甚だ助け船を出す気はないらしい。
…くそ、めんどくさい荷物を俺に押し付けやがって。
「そりゃ…まぁ…ナァが運命だと思ったんならいいんじゃね?」
「でしょでしょ!?さすが雪君っ!久とは違うよぉっ」
キャッと笑い、ナァは僕の肩に抱きついてきた。
ナァは惚れ癖より、抱きつき癖を治すべきだ。
相変わらずニヤけた一久を軽く睨み、ふぅっと息をついた。
…一久とナァ。
二人は中学からの腐れ縁らしい。