雪がとけたら
……………
「まじ?それは罪な男だねぇ」
ベッドを背にページを捲りながら、西はクスッと笑った。
「おま…他人事みたいに言うなよな。俺の身にもなってみろよ」
「そんなに強烈なんだ、ナァちゃんは」
「強烈っつーか…とにかくあのテンションについてけるのは、かろうじて一久くらいだよ」
はぁとため息をつき、手元にあった雑誌を捲った。
「西のせいでナァのテンションがいつもの倍だよ」
「あははっ、俺のせいか」
笑いながら本にしおりを挟み、パタンと閉じる。
図書館の匂いがふいに蘇った。
「でもそれは、俺にはどうしようもできないなぁ」
ぐっと背を伸ばし、その反動でベッドにドサッと横になる。
ふっと笑いながら目をつむる西を横目に、僕は呟いた。
「西はさ、好きな奴とかいねぇの?」
西の表情が少し固まった気がしたが、目を閉じているのでよくわからない。
「そういや俺、西のそういう話聞いたことねぇよ」
「あるだろ。告白された場面とかお前見てるし」
「じゃなくて、西自身の話だよ」
僕は見てもいなかった雑誌を閉じて、足を組み直した。
「お前めちゃくちゃモテるのに、彼女いたことねぇじゃん。なんで?」