雪がとけたら
…沈黙が部屋を包んだ。
別にそんな悪いことを聞いたわけじゃないのに、西が口を開かないから妙に不安になる。
「…俺さ…」
ふいに西が呟いた。
はっとして西に目を向ける。
二段ベッドの天井を見つめる目は、たまに見せる寂しそうなそれだった。
僕は真剣に西の次の言葉を待つ。
「…女の子、好きになれないんだよね」
西の視線が僕に向いた。
僕の思考回路が止まる。
…は?
僕を見つめる端正な西の表情は、ゆっくりと崩れていった。
「…ぷっ」
圧し殺した様に笑い始める西を見て、僕は自分がかなり間抜けな顔をしていたことに気付いた。
一気に顔が紅潮する。
「…おいテメェ…」
「はっ、あははっ!おかしすぎ…っ!中川の顔…っ」
「西っ!」
僕は横になってうずくまる西の肩を思い切り揺さぶった。
「わりぃ、冗談だよ冗談っ!本気にすんなよなぁ」
笑いのつぼに入ったのか、西の爆笑は止まらない。
からかわれてすっかり機嫌を損ねた僕は、西の足を思い切り蹴ってやった。
「いてっ!おま、本気で蹴るなよ!」
「うるせぇっ!人が真剣に質問してんのにっ!」