雪がとけたら



当たり前だと思っていた。


なのにその当たり前なことが、なんだかとても嬉しかった。


あいつを遠巻きに見ている奴らじゃない。


あいつは、僕が好きなんだ。


…そして、僕も…




「…帰ろう」




僕はあいつの手を握った。

あいつは笑顔で頷いた。



…つきあうことが何なのか、僕にはやっぱりわからなかった。

でもあいつの言うことは、わかった気がした。


お互い好きだから、一緒にいる。


僕はあいつが、あいつは僕が、好きだから。



この『好き』が、父さんや母さんに対する『好き』とは違うものだということを、朧気ながら知った夕方だった。





……………




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