雪がとけたら
ふぅっと西は息をつき、ようやく笑いを納めた。
「まぁさ、」
手を頭の後ろで組み、横たわったまま足を組み直す。
「悪いけど、ナァちゃんの気持ちには答えられないよ」
「だからそれが何でだって聞いてんの」
「好きにならないからだよ」
天井に目をやったまま、西は言った。
「好きになれないって言った方がいいのかな。どんな子に想いを寄せられても、俺は好きにはなれない」
表情はいつもの西だったけど、声は真剣だった。
それは単なる呟きの様で、どこか遠くに向けられた言葉である様にも思える。
「西」
「それよりさ、」
僕の声を西が遮る。
「戸田さんと、どうなわけ?」
頭をぶつけない様に背を丸めて起き上がり、ベッドから足を投げ出して言った。
「少しは話せた?」
瞬間、今朝のあいつの冷たい声が蘇る。
胸の針が疼く。
「…や…気安く話しかけるなとか、言われた」
さすがに笑いながらは言えず、なるべく暗くならない様に呟いた。
僕の呟きを聞いて、西も肩を落とす。
「そりゃ…昔の戸田さんからは考えられない一言だな」
僕は答える代わりに、軽く頭を縦にふった。