雪がとけたら
「だぁれ、あれ!?」
一久と喋っていたナァが僕に問いかけてきた。
そんなの僕が聞きたいくらいだ。
明らかに嫌そうな顔をしているナァの頭をポンッと叩いて、僕は西の方に向かった。
背中を、ナァと一久の視線が追いかける。
「どしたの」
僕は入り口で西に言った。
一応隣の女の子も気にするが、「誰?」なんて軽々しく聞く雰囲気ではなかった。
「ちょっといいか」
西はそう言って、顎で教室の外に促した。
隣の女の子は、眉間にしわを寄せたまま俯いている。
何がなんだかわからなかったが、とりあえずただ事ではない様に思えて、促されるまま教室を出た。
それを確認した西は廊下を歩き始め、彼女がそれに続く。
数歩遅れて僕も従った。
歩きながら、誰一人口を開くことはなかった。
…「ここなら、好きなだけ話していいから」
西が僕達を連れてきたのは、文芸部の部室だった。
僕は高校に入り部活はやってなかったが、西は相変わらず文芸部に入部していた。
まぁ、活動らしい活動は無いに等しいのだけれど。