雪がとけたら


いまいち状況が掴めない僕は、西に「何なんだよ」と聞いた。

西はそれには答えずに、僕と彼女にパイプ椅子をすすめる。

彼女が腰かけたので、僕も仕方なくそれに倣った。


そこで初めて、彼女が口を開いた。


「状況が掴めないと思うんだけど…」


その声は彼女の容姿にぴったりな可愛らしい響きで、やっぱり神妙な雰囲気が似合っていなかった。

「あたし、佐久間千歌っていいます」

自己紹介をされても、やっぱり僕にはわからない。

西に告白してきた子にも、こんな子はいなかった様に思う。

入り口付近で立ったまま腕組みをしていた西が、口を開いた。


「彼女、戸田さんの親友だって」



…一瞬で、パズルが繋がった。


ぼやけていた視界が開けると同時に、心臓がドクンと鳴り出す。

「悟子とは中学が一緒で…って言っても、悟子が転入してきてからなんだけど…」

当たり前の事を言いながら、彼女、佐久間さんは言いたい事をまとめている様に思えた。


「雪君のことは、あの子からよく聞いてた」


あいつの口から僕の話題が出る。

今のあいつからは、想像もできない。

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