雪がとけたら
「…何か…あったの?その時期に」
僕は座った膝に肘をつけ、掌に顎を乗せた。
そうすることで、心を落ち着かせようとしていた。
佐久間さんは軽く体を強ばらせる。
意を決した様に、彼女は呟いた。
「…妊娠、したの。」
…熱い鉄の塊で頭をガツンとやられた気分だった。
今にも止まりそうな思考回路を必死に繋ぐ。
僕の隠せない動揺を見て、佐久間さんはたたみかける様に続けた。
「誤解しないで欲しいの。あたしがこの事を話すのは、雪君に悟子のことを見放して欲しいからじゃない。雪君なら…ううん、雪君にしかあの子を救えない。それがわかるから話そうって決めたの」
必死に話す彼女に、僕は「相手は?」と呟いた。
冷静になっているつもりでも、明らかに語尾が震えている。
軽く深呼吸して、彼女は話し始めた。
「…一個上の先輩。あの子、転校してきた時から美少女で有名で、先輩もずっと告白とかしてて…でも、悟子は絶対うんって言わなかった。先輩だけじゃない、誰に告白されても、受けたことなんて一度もなかったの」
眉間にしわを寄せたまま、僕の目を見る。