雪がとけたら



……………


汗がシャツにまとわりつく。

鬱陶しいが、払っている暇はない。

僕はサウナの様な校舎の中を全力で駆けていた。


走りながら、必死にあいつを探す。

下駄箱に靴はあったから校内にいるはずだった。



…どこにいるんだよ。










…佐久間さんの話を聞いた後、僕は部室を駆け出した。

彼女は、僕にしかあいつを救えないと言った。

正直僕は、買いかぶりすぎだと思った。

今もあいつの中に、自分がいる自信なんてこれっぽっちもない。

救えるかと言われて勿論だと胸をはることなんて、到底無理な話だった。




…でも、彼女の話を聞いて思った。


僕はあいつと向き合うのが怖くて、それはきっと、あいつも同じだった。

向き合えた所でもう遅すぎかもしれないし、あいつを苦しみから救い出せる保証もない。


…でも、一緒に苦しむことならできる。

あいつの苦しみを、同じように感じることならできる。

自意識過剰なんかじゃなく、本気でそう思った。


だってあいつは苦しんでくれた。

両親が死んだ時、一緒に泣いてくれた。



僕等は辛さを、共有する術を知っているはずだった。



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