雪がとけたら
第二章【最初の死】
……………
あいつの家には、犬がいた。
名前はチロ。
人懐っこくて、でかい犬だ。
いつからいるのかは知らなかった。
僕等が生まれた時にはもういたからだ。
幼い頃、チロは僕等より大きくて、近付いていくとベロベロと大きな舌で顔を舐めた。
幼い僕等は、チロが大好きだった。
チロはマンションでもちょっとした有名犬だった。
大きな体の割に大人しい性格で、マンションの住民から好かれていた。
僕等が散歩に出かけると、決まって管理人さんがおやつをくれた。
僕とあいつとチロのぶん。
僕等は公園で、それを食べる。
それが僕等の日課だった。
その後チロが頬を舐めると、おやつの香りがして好きだった。
チロは、人の気持ちがわかる犬だった。
あいつが落ち込んでいる日は、管理人さんがくれたおやつを半分あいつにあげていた。
そうするとあいつは、決まって笑顔になった。
そして決まって、「チロ大好き」と抱きついた。
その時だけは、僕はチロに嫉妬したりもした。
僕等は、チロと一緒に成長したのだ。