雪がとけたら
第六章【追憶の夜】
……………
辺りはすっかり暗くなり、窓に浮かぶあいつの顔は、消えるように過ぎ去る街の景色に埋もれている様だった。
俯いたままのあいつの表情を盗み見ている様な気分になり、僕もふいと視線を落とす。
次第に見慣れない景色に包まれていく中で、僕等はお互い口を開くことすらなかった。
…数時間前。
僕はあいつの手を引き、この新幹線に飛び乗った。
後先考えない僕の行動にあいつが従ってきたのは、この新幹線の行き着く先がどこだかわかっていたからだろう。
…そこに行き、僕等は何か変わるのだろうか。
それは多分、お互いわかっていなかった。
…駅のホームに降り立つ。
もう手を引かなくても、あいつは僕の後ろからついてきていた。
人ごみに紛れながら、駅を抜ける。
…光輝くネオンの中に、一際目立つ一本の光り。
丸いその形は、初めて見た時と同じようにすいと空に伸びていた。
二人してそれを仰ぎ見る。
あの頃と変わらない、人工的な暖かい光り。
…目の前の京都は、あの頃と何も変わっていなかった。