雪がとけたら
「なんか…ごめん、こんなことになって」
僕は俯いたまま呟いた。
小さな呟きだったけど、狭い部屋にはよく響く。
ふいに顔を上げたあいつは、一瞥してすぐに視線をそらした。
「…千歌から、聞いたんでしょ」
突然の一言に、僕は思わず顔を上げた。
伏せた視線をそらしたあいつに、僕は言う。
「何で…」
「メールくれた」
佐久間さんの性格からして、黙ったまま僕に言うことはできなかったのかもしれない。
気まずさの漂う雰囲気の中、あいつは長い髪を耳にかけつつ言った。
「まぁ…予想はしてたけど。千歌が西君と同じクラスだって知ってから。いつか…あなたに言うんじゃないかって」
長い足を組み、はっと投げ捨てる様に笑うあいつ。
「幻滅したでしょ?」
その一言には、隠せない寂しさが溢れていた。
僕は思わず言う。
「幻滅なんてするかよ、そんなことで…」
そこまで言って、はっとした様に止めた。
口元に当てた手をゆっくりおろす。
「…ごめん、無神経だった…」
…『そんなこと』であるもんか。
そんな簡単に言えることじゃない。