雪がとけたら


「なのに俺は…お前の側に、いてやれなかった。一番…一番側にいてやらなくちゃいけないときに…俺は…」

「謝らないでよ」


ふいにあいつは声を上げた。

さっきまでの冷めた声じゃない。

真剣なあいつの声だった。



「謝らないで…あたしは…謝ってもらえるような、人間じゃない」

苦い顔で呟く。






「あたしは…許されちゃいけないんだ…」







その声は今にも消えてしまいそうで、僕は思わず立ち上がった。

あいつははっとして思い切り顔を背ける。




「ごめん…忘れて」




そう言うと、鞄を手に取り立ち上がった。


「あたし…別の部屋とるから」

そう言ってドアに向かうあいつ。

僕はとっさに手を取った。



「悟子」
「やめて、離してよっ」
「逃げんなよっ!」


突然の大声に、あいつは体を強ばらせる。


「ここまで来て逃げんなよっ!向き合えよ!俺とっ!」



今までにないくらい真剣に、あいつを見つめる。



「俺も逃げないから。どんな現実もどんなお前も受け止めるから。お前も…逃げんなよ。ぶつけろよ、俺に!苦しみも!辛さも!全部!」



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