雪がとけたら


ふいにあいつの表情が歪んだ。

僕に見られない様に視線をそらす。

細い肩が、微かに震えた。


「…悟子」


僕は小さく呼んだ。

フラッシュバックの様に、あの日の別れが蘇る。


「俺…もう、お前より大きいよ。三年前より、ずっと。…約束しただろ、あの日」






『少しだけでかくなって、待ってる。』






…あいつの瞳が揺れる。


そらした目から、ポロポロと大粒の涙がこぼれる。


僕はそっと、腕を離した。

ゆっくりとその手をおろす。



「…だめだよ」



噛み締めた唇から、微かに声がもれた。



「…だめだよ…あたし…あたし、雪ちゃんの側には、いれないよ…」


手のひらで口元を覆う。

その手の甲に、次々と涙がつたう。





「あたしは…雪ちゃんを幸せにできない。約束…もう、守れないから…」





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