雪がとけたら



「あたしは雪ちゃんを、幸せにできない…」


あいつの悲痛な呟きは、僕の胸にずしんと刺さった。



…あいつは僕よりずっと純粋だった。

無垢で、純粋だった。

どうしてそんなこと、忘れていられたのだろう。

僕が忘れてしまう様な些細な約束も、あいつはずっと信じていたんだ。

信じて、大切にしてきて、そして…


その無垢な約束が、あいつに罪の意識を生みだしてしまったのだ。


…僕との約束が、あいつを苦しめ続けていたのだ。




「…悟子…」




僕はあいつの手をとった。
そのままおでこに持っていく。

「雪…」
「ごめん…」


絞り出す様な声で、それだけ呟く。
あいつは首をふって言った。


「だから…謝るのは…っ」
「俺はお前がいればいいからっ」

濡れた瞳が上を向く。

眉間にしわを寄せたまま、僕は呟いた。


「一番大事なこと…言いそびれてた。俺は…お前がいればそれでいい。何もいらない。俺は…」


たったひとつ、それだけ。






「お前が好きだ」






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