雪がとけたら
チロは僕等より大きかったが、僕等が小学校に上がる頃には僕等の方が大きくなっていた。
僕等より力も強かったが、いつの間にか僕等の方が強くなっていた。
散歩の時には必ず全力疾走してたのが、やがて走らなくなっていった。
おばさんは、「チロはもうおじいちゃんなのよ」と言った。
でも僕等にはわからなかった。
だって僕等と同じように大きくなったのに、なんでもうおじいちゃんなんだ?
僕等はまだ父さんよりも小さいのに、チロがおじいちゃんなんてあり得ない。
そう思っても、チロが走ることはなかった。
散歩の時も、家にいる時も、
ゆっくりと歩くだけだった。
やがてチロは、管理人さんからもらうおやつを全部食べることが出来なくなった。
あいつが落ち込んでいない日でも、チロは半分残していた。
「チロ食べないの?」と聞くあいつの頬を、チロは大きな舌でペロリと舐めた。
それだけだった。