雪がとけたら
「ごめん…ごめんね、雪ちゃん…ごめ…」
「もっと呼んで」
「え?」とあいつが顔を上げる。
涙で濡れたその頬に触れ、僕はあいつを見つめながら言った。
「…呼んで。『雪ちゃん』って…もっと呼んで。」
ゆっくりとあいつの表情が歪み、僕の手にもあいつの涙が次々と伝う。
「雪ちゃん…」
「うん」
「雪ちゃん」
「…うん」
「雪ちゃん…っ」
…再びあいつを抱き締めながら、ふいに泣きそうになっている自分に気付いた。
悟られない様に、抱き締める腕に力を入れる。
比例する様に、あいつの腕にも力が入った。
…僕等はこれから、抱き締め合う度に今日を思い出すのだろう。
消えない罪悪感を胸に宿していくのだろう。
それでもよかった。
それでも側にいたかった。
意地も見栄もプライドも全て捨てて、
残るものが罪の意識だけであっても…
その隣には必ず
愛しさが存在していることを、十分すぎるくらいわかっていたから。
……………