雪がとけたら
第七章【同じ微笑】
……………
寮の部屋から見える夕焼けからは、夏の終わりが垣間見える様になってきた。
窓際に腰掛けながらまだ沈まない太陽を眺めていると、ガチャッとドアがあいた。
「行くか」
すらっと背の高い西は、シンプルな浴衣がよく似合う。
僕は前屈みになりながら窓際から降り、「ああ」と呟いて財布を握った。
…夏休みももう終わり。
今日の夏祭りは、夏休み最後のイベントだった。
「一久は?」
「先にナァ達迎えに行ったよ。校門のとこで待ってるはず」
「へぇ…女の子達も浴衣かな?」
「西に見せるって張り切ってたよ、ナァ」
「それは楽しみだ」とクスクス笑う西。僕も多少の期待をしながら校門へ向かう。
春子さんに「楽しんできなね」と声をかけてもらい(ただし春子さんは、西しか見てなかったと思うが)、まだ蒸し暑い外に足を踏み出した。
…「雪!西君!こっちこっち~!」
校門の所では、一久が大袈裟に手を振っていた。
西は笑顔で軽く手を振り返し、僕は少し肩を落とす。
カラコロと下駄を鳴らしながら校門に近付けば、一久の隣にいるあいつが目に入った。