雪がとけたら
いつもは自然におろしている髪を、今日は高い位置で団子にしている。
前髪だけはいつもの様にゆるく横に流し、その下にある大きな瞳が僕を見つけて微笑んだ。
紺色の浴衣が妙に大人っぽい。
「遅いよ~二人ともっ!」
あいつの隣には、赤と黄色の浴衣を身にまとったナァと佐久間さん。
「…なんかお前ら信号みたいだな」
「何よ~!素直に可愛いって言えばぁ?」
相変わらずテンションの高いナァは、早速西にキャッキャとはしゃいでいる。
ふぅっと息をつき、あいつに目をやった。
丁度あいつも僕を見る。
「雪ちゃんも浴衣だ」
「西が浴衣着るっつったら、一久まで乗り気になっちゃってさ。仕方ないから俺も」
「いいじゃん、似合ってるよ?」
僕の襟元を少し直しながらあいつが微笑む。
…お前には敵わないって。
少し赤くなりながら思うが、決して口にはできなかった。
「ほら、そこの二人!いちゃいちゃしてないで行くよぉ?」
ぴょこんと跳ねて、少し先を行ったナァが叫ぶ。
「はいはい」と呟いて、後ろに続いた。
皆の背中を見ながら「楽しみだね」と呟くあいつ。
そんなあいつの手を、皆に隠れてそっと握った。