雪がとけたら



…その日もいつもの様に、僕は放課後グラウンドでサッカーをしていた。

四年生になり、クラブがない日でも放課後は友達とサッカーをするようになった。

あいつもあいつで、女の子の友達とお喋りしながら帰っていた。

いつの間にか、一緒に帰ることはなくなった。


なんとなく、恥ずかしいと思うようになっていたのだと思う。


…多分、お互いに。


とにかくその日も、僕は放課後グラウンドにいたのだ。





日も沈みかけて、おなかもすいてきた。

「そろそろ帰るか」という井上の一言で、僕たちは荷物をまとめ始めた。


その時だった。





「雪ちゃんっ!」




あいつの声が、グラウンドに響いた。

ランドセルを担ぎながら振り向く。

校門の所に、息を切らしたあいつがいた。


目には涙が浮かんでいた。


驚いて目を丸くする僕に向かって、あいつは叫んだ。







「チロが…っ!」





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