雪がとけたら


「…始めから終わりは見えてたんだ。こんなこと…ずっと続けちゃいけないって。俺はともかく…朱音にこれ以上、罪を重ねさせちゃいけないって」


パタンとクローゼットが閉まった。


「あの祭り、朱音と一緒に行ったんだ。…まさか来てるなんて思いもしなかったけどさ」


僕はゆっくりと後ろを向いた。

クローゼットにもたれかかった西が、僕を見下ろす形で呟く。


「…言っただろ?本当の俺は、幻滅するような奴だって」



軽く微笑むと、西はドアに向かって歩き始めた。

僕は思わず立ち上がる。


「だからさ」

ガチャッとドアを開けた。



「ナァちゃんもこんな男やめて、違う人見つけたほうがいいよ。」







…西の肩越しに見えたのは、廊下に立ち尽くすナァの姿だった。




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