雪がとけたら
第八章【幸せな時】



……………

寒い季節は一気に駆け抜けた。

冬休みは地元に戻り、久しぶりに元気な顔をおばあちゃんに見せた。
おばあちゃんと叔母さん手作りのおせちを寮に残った西に土産として持って帰ったが、西は春子さんお手製の豪華おせちをしっかり一人で食べていた。

あいつはあいつで実家に戻り、年越しはあのストラップのついた携帯越しで行った。

それもそれで良かったけど、年が明けて寮に戻り久しぶりにあいつの顔を見ると、やっぱり直接会うのに勝ることはないと実感する。



1月2月は瞬く間に通りすぎ(憎きテストのせいだ)、冬とも春ともつかない3月になった。




「3月って、正直学校行く意味ねぇよな」
「いやあるだろ。テストの結果、まだ返ってきてねぇじゃん」

正論を言う西に、一久は「それがいらねぇんだよなぁ…」と呟いた。

僕はそんな二人をよそに、がさがさとビニール袋を確認する。


「あ、雪、確認すんだ?」

さも当たり前の様に言う一久に多少苛立ちを覚えつつも、一久には任せられないのも事実なのでそこは抑える。

「まぁ、これだけありゃ大丈夫だろ」

ふうっとため息をついた瞬間、ノック音が部屋に響いた。


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