雪がとけたら
校門に目を向けると、同じような三つの人影が見える。
「おーいっ!」
小さな声で叫ぶ一久の頭を「ばかっ」と殴る。
「いってー」と唸る一久を置いて、僕と西は校門に急いだ。
「ばれなかった?」
「バッチリ。お前らは?」
「よっゆ~!久がいるから、男子ちょっと心配だったんだけど…」
そう言うナァに、「そのまんまセリフお返しするよ」と後から追いかけてきた一久が呟く。
皆小さく笑っていたが、西の「早く行こう」という声を合図に校門を抜け出した。
…少し暖かくなった3月の頭。
僕達はこの『夜の寮脱出計画』を行動に移した。
夜の風を全身に浴びながら、目的地へ向かって走る。
…僕達の、本当の夜が始まった。