雪がとけたら
……………
「海だーっ!」
子どもの様にはしゃぐ一久は、荷物を砂浜に放り投げて駆け出した。
闇の向こうで「冷てぇっ!」と叫ぶ一久に「バカだなぁ」と呟く西とナァ。
あいつもクスクスと笑っていた。
夜の海は思ったよりも肌寒く、月明かりが浮かび上がらせる僕達は、腕を擦りながら波の音を聞いていた。
「おいナァ!こっち来いよ!」
一久が波の合間に叫ぶ。
「よぉし」とナァは靴を脱ぎ、砂浜を駆け出した。
「青春ごっこ!」
無意味に波打ち際を走り回る二人は、そんな馬鹿みたいなことを叫びながらはしゃぐ。
その光景に西が吹き出し、僕もあいつもつられて笑う。
「なんかいいね、こういうの。悪いことしてるみたいでドキドキするけど」
「悪いことしてるから楽しいんだよ」
「そっか」と言いくすくす笑うあいつの横顔を、月が綺麗に照らした。
「おいお前ら!高みの見物してねぇでまざれよ!」
闇の中から一久の叫び声が聞こえる。
「っしゃ、行くか!」
僕はポンッと砂浜に靴を投げ捨て、波打ち際に向かって走る。
後ろから西とあいつも駆けてきた。
「イエーッイ!青春っ!」
一久の叫び声が夜の海に響いた。