雪がとけたら
…一久の目がいつになく真剣だ。
その手元を女の子三人が固唾を飲んで見守る。
少し離れた場所で半ば呆れながらその光景を見つめる僕に、これまたマイペースな西が袋をがさがさしながら「なぁ、スルメ買わなかったっけ?」と問いかける。
「…いくぞ」
一久が呟いた。
三人がコクリと頷く。
僕が呆れた視線を投げ掛けた時、「着火!」という一久の勢いのいい声が響き、同時に西の「あ、スルメあった」という間抜けな声も響いた。
…「だから言ったじゃん、つくわけないって」
一久々の手元でゆらゆらと輝く炎は、当然湿気ているはずの花火の先をチリチリと燃やすだけ。
昇る燻った煙を、三人のため息が揺らした。
「もー拍子抜けっ!久絶対つくって言ったじゃん~っ」
「ほんとだよぉ。わざわざコンビニまで百円ライター買いに行ったのにぃ」
ナァがパンッとジーパンの砂を払いながら立ち上がり、佐久間さんもぶうっと口先を尖らせて見せる。
「っかしーなぁ…絶対つくって!海に花火はつきもんじゃん!」
それでも粘る一久に無情にも「だいたい花火なんて季節じゃないじゃん」と言い放ち、ナァは僕と西の方に向き直った。