雪がとけたら
「俺は教育学部の推薦狙ってそのまま上がるつもりだけど…みんなどうすんの?」
一久の問いかけにナァが答える。
「あたしも残留組かな。うちの大学心理学強いし」
「ナァ心理学科行くの?」
「うん、興味あるから。雪君は?」
そう聞かれるとよくわからない。
漠然と大学には行くのだろうとは思うけど、一久やナァみたいに細かいことは考えてなかった。
「俺は…まだわかんねぇや。大学には行きたいけど…何がしたいとか、そういうのはまだ決めてない」
「そっかぁ」
ザザァと波の音が響く。
僕達はもうすぐ二年になる。今よりもっと、真剣に将来を考えなきゃいけなくなるんだ。
「悟子は?」
僕はあいつに聞いてみた。
あいつは少し考えて言う。
「あたしも大学とか、まだ全然わかんないけど…漠然と、服とかファッションとか…そんなのに関われたらいいなぁ、とは思う。」
砂をいじりながら言うあいつの話しは、初耳だった。
「悟子おしゃれだもんね」と佐久間さんが相槌を打つ。
確かにあいつは、昔からファッションには敏感だった様に思う。
昔あいつの部屋に置かれていたファッション雑誌がふいに脳裏に浮かんだ。