雪がとけたら
「なんてね。まだ全然わかんないけどさ。でも…」
風が潮の香りを運んだ。
「でも一番は、やっぱり大切な人の側にいたい。」
僕はあいつの横顔を見た。
変わらないあいつの笑顔がある。
根本的な所は何も変わらないあいつを感じ、僕は少しだけ安心した。
「も~のろけちゃって!」
ナァがあいつを冷やかし、照れた様にあいつは笑う。
そんなあいつらを見ながら、西がちょいっと僕の肩を叩いた。
僕が振り向くと、一久と西が目で合図を送っている。
…そろそろか。
僕は頷き、佐久間さんにも合図を送った。
佐久間さんも手でオッケーと合図し、ばれないようにそっと動く。
「そろそろいい時間かなぁ?」
佐久間さんが言った。
その合図にナァも気付く。
ニコッと微笑むと、さっと後ろに下がった。
他のみんなも同じように下がり、あいつの周りを取り囲む様にする。
「え、何?」
あいつは訳がわからないという表情をしていた。
無理もない、いきなりみんなに無言で囲まれたのだから。
みんなで目を合わせ、頷き合う。
ナァが大きな声で叫んだ。
「いくよ?せーのっ!」