雪がとけたら
「ハッピーバースデーッ!!」
皆の大声と共に、クラッカーの弾ける音が海にこだました。
あいつは呆然と目を丸くしていたが、次第に状況を理解していく。
「え…もしかしてみんな…」
「そ!今日のこの大脱走のメインは、悟子のサプライズバースデーパーティーだったんだっ」
「提案はナァなんだよ!」
へへっと自慢気に言うナァに、「緻密な計画は西君だけどな」と一久が付け加えた。
「もーっ余計なこと言わなくていいのに~っ」
あははっと皆が笑う。
「ね、悟…」
…佐久間さんの言葉が止まった。
皆も次第にそれに気付く。
方眉を下げて、僕はあいつの頭に手を乗せた。
「…誕生日おめでとう、悟子。」
…手のひらで顔を覆い、あいつはしゃくりあげる様に泣いていた。
「泣き虫だなぁ、悟子」
「ほらっ!せっかくの誕生日だから笑わなきゃっ」
「おいナァ、泣かすなよな!」
「ナァのせい!?」
西がははっと笑い、あいつもつられて微笑んだ。
一久達も笑う。
あいつはそっと僕を見て、僕もまた微笑んだ。
「ほんと…ありがとう。」
笑い声に包まれた海辺で、あいつは16歳になった。