雪がとけたら

盛り上がる皆とは反対に、あいつは困った様な顔を崩さない。

僕はあいつに、「どうするの?」と聞いてみた。

騒がしかった部屋も一気に静かになる。

皆の視線が集まるなか、気まずそうにあいつは呟いた。



「…断るつもりだけど…」



あいつの一言に、ナァ達の表情が一気に曇る。

「えーっ!?なんで!?」
「すげぇ有名なとこじゃん!絶対騙しとかじゃないって!」
「そうだよ。それに悟子、ずっとファッションに興味持ってたじゃん」

一久とナァに加わり、佐久間さんも説得しようとしていた。

確かに、あいつはこの前そんな事を言っていた。
それを考えたら、これは絶好のチャンスかもしれないのだ。


「興味あるっていっても、まさかモデルとか…そんな大それたことなんて考えてなかったし…」
「何言ってんの!さっちゃんそこらのモデルよかよっぽど綺麗だよ!?」
「背だって高いし、すげぇぴったりだって!」

ナァと一久の言葉にお世辞はなかった様に思う。
二人とも本気でそう思っているんだ。

二人だけじゃない。

あいつを知ってる奴なら誰でもそう言うだろう。

昔からあいつは、普通の人とは違うオーラの様なものがあった

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