雪がとけたら
ただ本人はその意識が薄い。
今回のスカウトだって、何で自分なんだろうと思ってるに違いない。
納得しないナァ達に戸惑いながら、あいつは僕に助けを求めた。
軽くため息をつき助け船を出す。
「まぁ…やるやらないは本人次第だろ?悟子が受けないって言うのに無理して勧めることもないだろ」
僕のもっともな意見に「そうだけどぉ」とナァは口を尖らせた。
佐久間さんもあいつに、「ほんとに受けないの?」と真剣な目を向ける。
あいつは眉を八の字にしながら「うん」と答えた。
「ま、すぐすぐ結論だす必要なんてないしな。一久達が言う様に戸田さんに魅力があるのも本当だけど、中川が言う様に受けたくないものを受けることもない。戸田さんはゆっくり考えたらいいよ」
西の一言で、とりあえずその場はおさまった。
申し訳なさそうに「ごめんね」と謝るあいつ。
帰りしなに、あいつの表情が少しだけ曇ったのが気になった。
……………