雪がとけたら


何をいきなり言い出すんだと思ったが、彼はいきなり核心的なことを言った。


「君は、何かに囚われている様だね。そのせいで前に進めないでいる。…違うかな?」


あいつの手のひらから、ぴくりとした衝動が伝わってきた。
それが僕を焦らす。

「もし君が本当にモデルという職業に興味がないなら…それは仕方ない、諦めるよ。でも君が断るのはそんな理由じゃない。…それがわかるから、僕達は諦められないんだよね」

ははっと苦笑をし、再び真剣な声で言った。


「…君にはオーラがある。それは、努力でどうにかなるものの域を越えている。僕は…その君の魅力を、最大限に開花させることができる。それは保証するよ」


「いい返事を期待してます」と礼儀正しく言い残して、彼らは帰っていった。


…残された二人の間には、ねっとりとした扱いようのない空気が満ち溢れている。

あいつはそれを振り切る様に、「行こう」と手を引いた。

でも僕はその流れにのることができない。

つんのめりになりながらも立ち止まり、「…どうしたの?」と不安げな視線を向けるあいつ。

僕は迷いながらも呟いた。

「…悟子」

あの人の言葉が思考を占領する。

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