雪がとけたら
……………
小学五年生になっても、僕はあいつの身長を越せなかった。
昔は何とも思わなかったけど、今はなんだか無性に気にくわない。
あいつより背の低い男子なんかいっぱいいたし、(むしろほとんどの男子は低かった)そんなに大きく違うわけでもなかったけど、それでも嫌だった。
僕はどうしても、あいつより背が高くなりたかった。
…男の、プライドだ。
「ねぇ雪ちゃん」
「雪ちゃんって呼ぶな」
「何よ、雪ちゃんは雪ちゃんじゃない」
僕はあいつの前を歩きながら、ネットに入ったボールを蹴っていた。
いつの間にか、僕が前を歩くようになっていた。
「クラス、楽しい?」
「別に。フツウ」
「…ふぅん」
五年生のクラス替えで、僕等は初めてクラスが離れた。
見渡せばいつもいたあいつが教室にいないのは、なんだか少し不思議な気分だった。