雪がとけたら
「雪ちゃんに言われて、色々考えてみた。確かに…雪ちゃんの言う通りだと思う。あたし…まだ、自分を許せてないの」
あいつの瞳は真剣そのもので、僕もまた真剣に話を聞いた。
「だからあたし、一生日の当たらない場所で生きていくと思ってたの。口ではファッションに興味あるとか言ってたけど…あたしに未来を選ぶ権利なんてないって思ってた。…ひとつの命…ひとつの未来を、あたしの都合で生み出して、あたしの都合で消したんだから…」
あいつの眉間にゆっくりとしわが寄っていくのがわかった。
…まだあれから、二年しかたってない。
あいつの心の傷が癒えるだけの時間は過ぎていなかった。
もちろん、一生かかっても消えない傷である可能性もある。
あいつは今この瞬間も、罪の意識に押し潰されそうになっているのだ。
「だから今回のお話は、あたしに一番向いてないと思ったの。あたしみたいな過去を抱えてる人間が、堂々と足を踏み入れていい場所じゃないって…そう思った」
何も言えない僕に、あいつは「でもね」と続ける。
「あたし思ったの。それは何もモデルっていう仕事に対してだけじゃない。あたしは…前に進む事自体を怖がってるんだって」