雪がとけたら
それは僕も思っていたことだった。
…あいつは、前に進む事を怖がっている。
それは、僕等が罪を背負っていこうと決めた日に予感していたことでもあった。
罪が消えない限り、過去から解放されることもない。
あいつはそれにがんじがらめにされながら、新しい場所に踏み出すことに強く恐怖を覚えているように見えていた。
「でも…やっぱりそれじゃ、ダメだと思って。過去は…変わらないし、罪も消えることなんてない。でも…立ち止まったままでいることに、意味なんてないんだよね」
あいつはゆっくりと宙を見た。
その目は今まで見たあいつの中で一番強く、一番遠い気がした。
「…やってみようと思う。怖いけど…でも、踏み出そうと思う。だって…」
その目がゆっくりと、僕に向けられる。
「だって、雪ちゃんがいてくれるもん。考えたら、何も怖がることなんてなかった」
あいつの頬がゆっくりと緩んだ。
「雪ちゃんがいてくれるから…あたしは強くなれる。雪ちゃんの側にいて恥ずかしくないように、あたしは強くならなくちゃいけないもんね」
そう言うあいつは少しだけはにかんでいて、そしてとても綺麗だった。
とても、強かった。