雪がとけたら
「…なんか」
口を開いた僕に、あいつは視線を向けた。
「なんか俺…カッコ悪いな」
ははっと苦笑する僕に、「なんで?」と不思議そうな顔を向ける。
「…いや…」
暗い空を見上げる。
…俺、まだ全然成長してねぇな。
昔となんら変わってない。
あいつが違う世界に行くことをこの上なく怖がり、自分が取り残されることにひどい嫌悪感を覚える。
だから今回だって、なんだかんだ言いながらあいつが前に進むことを心から望めなかった。
…自分の側から離れて欲しくないと、強く望んでいた。
それは子どもじみた独占欲でもあり、幼い頃に経験した辛い別れのトラウマでもあったのかもしれない。
でもそんな僕とは正反対に、あいつは前を向いていた。
怖がりながらも、前に進むことを選んだ。
…情けない。
うわべだけ前に進んでいるふりをしている僕。
僕もまた、実際に一歩を踏み出さなければいけない。
過去は忘れちゃいけないけど、乗り越えることは必要なのだ。
「…応援するよ、俺。」
あいつの問いの答えにはなっていないけれど、僕はそう呟いた。
あいつも一瞬目を丸くしたが、すぐに口の端を少しだけ上げる。