雪がとけたら
第十章【弱さ故の】
……………
冷たい空気を感じて視線をそらすと、微かに開いている窓に行き着いた。軽くため息をつきそれをきっちり閉める。
「一久、ちゃんと窓閉めてけよな」
閉まった窓から見える外はうっすらと白く染まっていて、多分一久がつけてまわったであろう足跡が至るところに存在していた。
「雪を喜ぶなんて、まだまだ子どもだね」
いつもの余裕のある笑みでそう言う西は、ナァが置いていった雑誌をパラリと捲った。
横目でそのページを見つめる。
僕の視線に気付いたからかそのページを開いたまま雑誌を床に置き、くっと伸びをして言った。
「戸田さん、大人気だね」
僕はカーテンを閉めながら「そうだな」と呟く。
その呟きは我ながら暗いものではなかったと思うし、西もそう思ったからかその話を続けた。
「CM見た?」
「ああ。つかナァが録画したの見せてもらった」
「基本俺らよりナァちゃんの方が情報早いしな」
くくっと笑い、煙草に手を伸ばす西。
その煙草に火がつく様子を眺めながら、ぼんやりとあいつを思った。
…季節は足早に通りすぎ、この寮で過ごす二回目の冬が訪れていた。