雪がとけたら
二年もたてば周りが変わっていくのも当たり前だが、とりわけあいつを取り巻く環境はガラッと変わった。
元々兼ね備えていたオーラと磨きのかかった美しさで、気付けばあいつは一躍時の人となっていたのだ。
あいつの入った事務所はなるほど有名なだけあって、きっちりと仕事を取ってきた。
今や殆んどの女の子が読んでいるファッション雑誌の専属モデルとなると同時に、事務所がバックアップしている飲料水のCMまですぐに決まったのだ。
ファッション雑誌だけでは若い女の子くらいにしか認識されなかっただろうが、CMとなれば話しは別。あいつはすぐに「あの女の子は誰!?」と騒がれる程のセンセーションを巻き起こした。
知名度が上がるにつれあいつの人気も上昇し、モデルデビューしてから3ヶ月もたたないうちに雑誌の看板モデルにまでなっていた。
「戸田さんの際立ったカリスマ性は知ってたけど、さすがにここまですぐ人気者になるとは思わなかったなぁ」
西はさっき閉めたばかりの窓を開けに立ち上がった。
すうっと冷たい空気が煙草の煙とまざりあう。
「最近会ってるの?学校にはあんま来てないみたいだけど」
窓際に立った西が僕に聞いてきた。