雪がとけたら



……………

最近あまりよくなかった天気も、今日は久しぶりに機嫌をよくしてくれたみたいだ。

マフラーを口元まで引き上げながら視線をゆっくりと動かす。


休日だと言っても人はまばらで、通りすぎる人は寒そうにしている。でもその笑顔は幸せそのもので、僕の顔も自然に緩んだ。


「…おっせぇなぁ」


ポツリと呟いて時計台を見る。

待ち合わせ時間五分前。

早く来すぎた自分に苦笑してしまう。


遠足の日の小学生の様に浮き足だったまま、僕はあいつの姿をまた探しだした。



…園内放送が響く。

ゴォッとジェットコースターが落ちる音がそれに重なる。

軽く目を閉じてそれに耳を傾けた瞬間だった。






「雪ちゃん」







…電話越しじゃない久しぶりの声に、僕の心臓はトクンと跳ねた。

ゆっくりと視線を前に移動させる。


数歩前に立っていたのは、久しぶりに目にするあいつの笑顔だった。


僕だけの、あいつの笑顔だった。



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