雪がとけたら
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「ここ、昔西と二人で来たんだよね」
「えぇ?西君と二人?」
僕等の横をキャッキャと騒ぎながら女の子達が通りすぎた。
目深にニット帽を被っているおかけで、あいつに気付く人はいない。
「ヤバかったなー俺達。男二人で観覧車とかメリーゴーランドとか」
「あははっ、本当に~?」
満面の笑みのあいつ。雑誌で見る綺麗な笑顔じゃないけど、僕はやっぱりこの無防備な笑顔が好きだ。
「じゃ、今日は女の子とのデートとして堪能しなきゃね」
ふふっと笑うあいつに僕もニヤリとしながら「そうだな」と答えた。
「まずはどれから行きますか?お嬢様」
あいている片手を胸の前で折り曲げ、仰々しくお辞儀をする。
あいつもまんざらでもなさそうな笑顔で「ジェットコースターがいいわ」と言う。
そんなじゃれあいをしながら、僕等は久しぶりに普通の恋人同士に戻れている気がした。
一番幸せな、この瞬間。
僕はあいつの手を握り返し、最高の一日の幕を開けた。
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