雪がとけたら
「そろそろ行く?」
あいつはコートを手に取り立ち上がった。
僕もそれに倣い立ち上がる。
「だな、じゃあ…」
「あのっ」
突然後ろから声をかけられ、僕は思わず振り向く。
僕の後ろにはさっき店に入ってきた女の子達が頬を軽く紅潮させて立っていた。
「あの、もしかして…Satokoさんじゃないですか?モデルの…」
…やば。
僕はどうしていいかわからず、ゆっくりと視線をあいつにずらす。
あいつもまた、驚いた様に瞳を丸くしていた。
「え、何有名人?」
「あ、もしかしてCMの…」
「ほんとだ!スポドリの子でしょ!?」
あっという間に騒ぎは広がり、店のなかがざわつき始めた。
このままここにいると益々騒ぎが広がるだろう。
僕はあいつに目で合図を送った。
あいつもそれに気付き、軽く頷く。
…同時に僕等は、店を飛び出した。
後ろで女の子達が騒いでいるのがわかる。
僕等は走りながら、思わず吹き出した。
「あは…あははっ!」
「なんか俺、有名人になったみたいだ」
笑いながら手を取りあい走る。
何が可笑しいかもわからなかったが、なんだか楽しくて仕方なかった。