雪がとけたら



……………


五年生になり、あいつは今までよりもっと大人っぽくなった。

ランドセルが全然似合わないから、あいつは気にしてトートバッグに変えていた。


小学生には、見えなかった。


だから僕は、あいつの隣を歩くことを躊躇う様になった。

全然ランドセルも似合うし、年相応にしか見えない僕。

大人びたあいつの隣で、胸を張って歩く自信はなかった。






…「女の子の方が、先に成長するんだよ」

浴室に、父さんの声が響く。

「父さんも母さんも背は高いから、心配しなくても雪も大きくなれるよ」
「そうかなぁ…」

ピュッと手のひらで水を飛ばした。

「雪もそんなこと気にする年になったかぁ」

ははっと笑いながら、父さんは僕の頭にぽんっと手を乗せた。

なんだか気恥ずかしくなり、僕は勢いよく顔をお風呂につける。

「おっ、競争か?」

父さんも僕と同じ様にお湯に潜った。


ブクブクと泡の音が耳に響く。


苦しくなり顔を上げると、父さんはまだ顔をお湯につけたままだった。

悔しくなり、僕は父さんの顔を無理やり上げさせる。


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