雪がとけたら
……………
男三人、大の字になって中庭に寝転ぶ。
桜の花びらがたまに頬をかすめるが、寝転がって見上げる桜もまたいいものだ。
「春だねぇ」
一久がのんきな呟きをするもんだから、なんだか老後の縁側にいる気分になってしまう。
「俺ら三人、のんきなもんだよな」
西が笑いながら呟いた。
僕達三人は所謂『推薦組』で、エスカレーターに乗ったまま付属大学に行く予定だ。
僕もなんだかんだ言いながら、付属大学の文学部を第一志望にしている。
「それを言うならナァもだろ。大変なのは佐久間さんくらいだな」
僕はそう言いながらも、佐久間さんなら余裕だとも感じていた。
佐久間さんは結局言っていた通り外部受験の方に進み、彼氏と同じ大学に行けるように日々努力している。
…と言っても、努力するのは彼氏の方で、佐久間さんは彼氏の勉強を助ける努力をしているのだが。
「春かぁ…。残り一年をきった実感、全然ねぇなぁ」
一久が舞い落ちてきた花びらをキャッチしながら言う。
高校三年。
この制服を着ていられるのも、あと一年だ。