雪がとけたら
「早いよなぁ、時間が過ぎるのって」
西の呟きに一久が「年寄りくせぇっ」と笑った。
しばらく三人で笑っていたが、誰からともなく口を閉じる。
僕達はただぼんやりと、舞い散る桜を見上げていた。
「…来年の今頃も、こうやってられっかな」
一久が呟いた。
…来年の今頃。
僕達はどうしてるだろう。
変わらないまま、いれるだろうか。
「入学式の後、スーツで寝転ぶか」
んっと起き上がった西はそう言って立ち上がった。
僕達の上に西の影ができる。
「不法侵入で捕まるかな」
悪戯そうに言う西に、僕達は笑って「そりゃそうだろ」と答えた。
先のことはわからない。
わからないからこそ、思い描くことができるのかもしれない。
みんながいて、僕がいて、あいつがいて。
…そんな未来を思い描くことが、今を生きるほんの少しの糧になる。