雪がとけたら


寮に戻ろうと三人が帰路についた時、突然一久が口を開いた。

「そういや戸田さん、次は映画だって?」

突然のあいつの話題に少しつんのめりになりながらも、「うん、そうみたい」と答える。

「すげぇなぁ、戸田さん」

一久の呟きを背中に聞きながら、僕はぼんやり考えた。



…冬の遊園地デート以来、僕はあいつに会えていない。


あの後すぐ、あいつは単発ドラマの出演が決まった。
あいつの専属雑誌のOGが主演をはるということで、あいつにその妹役の白羽の矢がたったのだ。

そのドラマがなかなかの視聴率だったらしく、あいつの知名度は益々上がった。

僕にはよくわからないけど、あいつの演技力はなかなからしく、そっちの世界にも比例するように知名度が広がった。
そして先日、ついに映画のオファーがきたのだ。


「公開ってまだなの?」
「公開どころか、撮影もまだだろ。クランクインが7月だって言ってたし」

よくは知らなかったが、夏の離島で撮影するらしい。

その間もちろん雑誌をあけるわけにもいかず、今の内に夏に掲載するあいつの特集やロングインタビューを撮影している。
忙しさはいつもの倍以上だ。


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