雪がとけたら


…あいつは最近食欲がないみたいだった。

食べなきゃ元気になるものもならないと思い、僕は毎回何かしらお土産を持って来るようにしている。

できるだけ口に運びやすいお菓子やフルーツなどを、ナァ達も探していてくれていた。


「いっぱい食って、早く元気にならないとな」


これが最近の僕の口癖だった。

それを口にする度に、あいつは少し微笑み「そうだね」と呟く。



それでもあいつが、残さず全部食べれたことはなかった。













…「大丈夫かな、あいつ」


夏休みも終わりかけた8月の末。

僕は西の部屋で夕涼みをしていた。

僕の呟きに西は読みかけの本を閉じ、隣に腰かける。


「戸田さん?」
「…あんま食えないみたいなんだよな。点滴も外れないし」


ただでさえ夏は食欲が落ちる季節なのに、あいつは輪をかけて食欲が低下している。

今日もご飯をあまり食べていないみたいだった。


「…あのさ」

西がゆっくりと呟いた。

言いにくそうにしている西に「何?」と急かし、続きを待つ。

少し躊躇ったが、意を決した様に話した。


「知ってるかもしれないけど…」







……………






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